本日記_インシテミル
どうも、ぬれこじです。
前回『氷菓』を読み、米澤ワールドに吸い込まれてしまった私は書店で「よ」の棚を熱心に探し今回はこちらをセレクトしました。
『氷菓』や『満願』と違って、圧倒的にミステリの世界。
小学生のころ通学時間にはまりにはまったホームズやポワロが顔をのぞかせてくるような、「さあ、ようこそ」と言わんばかりの非日常な世界が描かれています。
登場人物たちはそれぞれの動機を持って非常に怪しげなバイトに応募して一つの施設に集められます。バイトの内容は「実験」に協力すること。彼らは不思議な円形の施設に閉じ込められ、24時間徹底的に監視されながら7日間を過ごす……。
うわぁ、なんてミステリ。
思わず笑っちゃうような、それも「知ってる知ってる」と嬉々として笑っちゃうような王道展開ですよね。実はそこが最後に面白みとなってくるとかこないとか。
米澤さんの本で何より強く感じるのは「緊張感」「ドキドキ感」。読んでいる最中に自分も背後に忍び寄る足音に注意しなければならないような、手に汗握る空気感が小説の中に充満して、否、小説を飛び越えて自分の身体を駆け巡っていて、それだけで全身がぞくぞくします。
「知ってるよこの展開。」「ってことはこの後は……?」「この人怪しいぞ。」
ミステリを読んでいる人ほど「あるある」って思いながら、またそう思うことに優越感と興奮を抱きながら読み進めることができるのではないでしょうか。逆にミステリを読んでいない人にとっては、、、最高に面白く予測できない展開の連続で心臓を掴まれっぱなしだと思います。
17時ごろこの本を手に書店から帰宅し、その日中に読み終わってしまいました。
ミステリを読むときって、どうしても読み始めた疾走感を崩したくないんですよね。登場人物たちと同じように、「もうこれが終わるまでは現実世界に戻れない」って気持ちになります。
その日中って書きましたが読み終わったのは夜中です。手に汗握りしめながらいそいそと布団に入りました。
『黒牢城』、読むしかありませんね。
本日記_氷菓
どうも、ぬれこじです。
人気「古典部シリーズ」の一作目ということで、おすすめされて読みました。
米澤さんの『満願』を読み、その仕掛けの面白さ、人間味のにじませ方に感銘を覚え、知人に紹介された「古典部シリーズ」である本作も手に取る運びとなりました。
結論から言うと、高校生っていいなあ!!という感想を抱きました。
大学に入り、卒論や進路に悩み昼夜頭を抱えている自分にとって、そうした先のことでなく、「今ここ」の時間、永遠にも思える例えば放課後などに謎解きに尽力する、そうした古典部の面々に羨ましさを感じました。
放課後、って特別な時間でしたよね。薄暗い校舎、人気のない中庭、上靴が並べられた靴箱の独特なにおい。そうした特別たちが特別な空気を作っている、そんな時間でした。
さあ本題の内容というとミステリ小説といえど、死人が出たり閉鎖的な空間に閉じ込められて突然得体のしれない「支配人」からの指令が届いたり、なんてことはなく、折木たちの暮らす日常に潜む謎を解いていくというスタイルで軽く読むことが出来ます。
米澤さんの『満願』を読んだ後だけに、どんな奇想天外な展開が仕掛けられているのか、と半ばワクワクしながら読んだのですがあくまでこちらは日常が繰り返されていくという構成で、最後まで読んで少し拍子抜けしてしまいました。これは私の事前情報不足によるものですので作品自体になんら問題はありません。ただ感想として記録しておきます。
シリーズものということで、今後どのような展開になるのか楽しみな作品です。
先述の通り出てくる謎が比較的あっさりとしているので、読み進めながら自分で推理していくのも面白いですね。「氷菓」に込められた謎、皆さんは解けましたか?
折木の言う「薔薇色」の高校生活を送った(と自負している)私ですが、彼のように自由に、縛られず飄々と生きてみるのも楽しかったろうな、と思わされました。小説を読んで楽しいのは、他者の人生を追体験できるところでもありますよね。
先ほどは拍子抜けした、なんて言いましたが米澤さんの本は他のものも読みたい、と強く思わせる何かを持っています。その証拠に先日また別の著作を買ってしまいました。
しばらく米澤ワールドに浸りたいと思います。
本日記_卵の緒
どうも、ぬれこじです。
今月一発目は瀬尾まいこさんの『卵の緒』を読みました。
多様な家族の形を描いた2話が収録されています。
瀬尾まいこさんの『天国はまだ遠く』という本を以前読んで、当時自殺を考えるほど精神的に参っていたのですが大変救われたのを覚えています。依頼瀬尾さんのファンになり、今回も手に取りました。
瀬尾さんの作品は、愛に満ちています。愛とは、誰かを強く思う気持ちだと思いますが、その思い方、伝え方、受け止め方は本当に人それぞれですよね。瀬尾さんの作品の登場人物は各々が愛を持っていて、必ず話のどこかでその愛を見せてくれていると感じます。私が彼女の作品を読んで涙するのはなぜでしょうか。愛に飢えているのかな。それとも、今まで受けた愛を思い出すからなのかな。
表題作「卵の緒」では、最後に母親の君子さんの告白シーンがあります。このシーンの君子さんの話の仕方、伝えたい事の伝え方、それにとても感銘を受けました。素直に、本当に素直に、ありのままに、自分の話をするんです。私は人と話すとき素直になろうと思ってもどうしてもどこか意地を張ってしまって、相手と張り合ってしまったり言いたくないと思っていることが口をついてしまったりと失敗することが多いです。でも、人との関わりにおいて大事なことは本当に素直な気持ちになって自分と、相手と向き合うことなんじゃないかな、と思わされました。
素直な気持ちでありのままでお話をした後は、ちょっぴり恥ずかしくなったり反省したり(どう思われたかな。)と心配に思ったりしつつも、とってもすがすがしい気持ちになるものです。
家族のあり方、というのがテーマにも思われますが、根幹にあるのは「人との関わり方」という、人としてとても大事なことだと思います。家族がいる人もいない人も、万人が温まれるような温かい小説だと思いました。楽しかったです。ありがとうございました。